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代表挨拶

2021年度の我が国の政府開発援助の総額は、過去最高の1兆7,356億円を計上する見通しである。 これまでの最高額が1995年(平成7年)の1兆114億円であることから、26年ぶりに記録を更新することになる。 この背景には、世界中に例外なく影響を及ぼしている新型コロナウイルスによる感染者の増加により、特に逼迫している途上国の保健医療体制に対して、我が国はワクチンや輸送用の車両および冷凍庫、また人工呼吸器、酸素濃縮装置といった治療機器を緊急支援したことによる。
しかし、終息の目途が見えない新型コロナウイルス感染症を通じて見えてきた保健医療分野における世界共通の課題は、医療関連感染(HAI)の防止対策をどう講じていくかである。医療施設内に限らず、医療行為が行われるすべての場所で新たな感染を生み出さないための対策を目指すのである。例えば、外科治療で来院した患者がコロナに感染し、在宅医療に赴いた医療従事者が罹患するなど、あってはならないことである。 我が国には、厚生労働省や各地方自治体がガイドラインを、各医療施設がマニュアルを作成し、運用しているが、開発途上国では国レベルのガイドラインすら整備が進んでいないことも多く、開発協力ではこうした制度面での支援が重要である。
これまで、弊社はミヤンマーで日本の5S改善を紹介し、保健省のガイドラインのもとに医療施設のスタッフが院内感染マニュアルを自力で作るという手助けを、またウズベキスタンでは、技プロ「非感染性疾患予防対策」と情報収集確認調査「院内感染対策に関する遠隔研修の需要に係る調査」の2つのプロジェクトを担当しており、現在のコロナ渦で採択された案件としてHAI防止、遠隔研修の活用など、コロナ過で着目すべき論点が両案件にはあり、今後シナジー効果が期待できる。
これまで我が国が60年以上にわたって取り組んできた医療施設の建設、医療機材の調達および保健医療人材の育成など総合的な取り組みを強みとしてきた日本の保健医療協力には、そうしたシナジー効果を創出できる可能性が多分に含まれており、これを新たな強みとして、弊社も今後、支援を必要としている発展途上国にバランスのとれた支援の手助けを続けていく所存である。 代表取締役 阿部一博

ウガンダの赤道にて 代表取締役 阿部 一博